愛されオーラに包まれて
『社食で、遥香に水かけちゃって、"大嫌い"なんて言っちゃって、自分の感情のコントロールができなかった。いざ、遥香やお二人と疎遠になってみると、桐生さんの遥香の仲よりも、こういう飲み自体がなくなってしまったことの方が、辛いことがよく分かった』

越後は3人を交互に見た。

『そして、3人は仕事の話で盛り上がれるのに、私はそれには乗っかれない。広告局で頑張ればよかったのに、格好から入ろうとするから生意気に思われて、先輩たちのアドバイスや指示をまともに聞く謙虚さにも欠けていたんです。だから、クライアント営業の見習いさえも2回くらいしかさせてもらえなかった』

広告局の同期からは聞いていた。
越後の評判、悪いよ、と。

研修の仲間として、憂慮はしていた。
そして俺と遥香の関係が、ダメ押しになってしまった。

『遥香、私からもごめんなさい。きっちり自分を見つめ直して、会社の役に立てるような人間になるから』
『うん、応援してる』

遥香は微笑みながらも、目は真剣だった。

『でも、あんまり頑張り過ぎるなよ。つまづいたり、悩みがあったらいつでも言えよ』
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