愛されオーラに包まれて
名将であるゆえ、遥香には父親と遊んだり、休日に出掛けた記憶がほとんどないらしい。
小さい頃は向かいに住んでいるいとこの家に預けられ、家族のようにして育った。

父親とは、喧嘩をしたわけでもなく、仲が良かった時期があったわけでもなく、疎遠な状態が当たり前だった。

遥香が大学進学で東京へ出てくることになった時も、特に寂しそうな素振りは見せなかった。

一年ぶりの実家帰省。
遥香の話を総合すると、手塩にかけて育てた娘、とは言い難い。

父親にとって、娘はかわいいもんじゃないのか?
あまりにも放任すぎるような気がする。

車は最寄りのインターチェンジを降り、景色が大分のどかになってきた。

遥香が高校まで過ごしたこの地。
その場に俺がいることが、感慨深い。

俺は東京生まれの東京育ちだから、故郷というものがなく、遥香のような田舎の実家がある人がうらやましく思っていたというのもあるんだけどね。

"昼ごはんは食べて来ないで"との父親の指示らしく、俺達はまっすぐ遥香の実家に着いた。
< 126 / 345 >

この作品をシェア

pagetop