愛されオーラに包まれて
嘘?
そんな…今のは私の本心なのに。

「由依、あのね…」
『戻ったよ。あ、神戸さん、お久しぶりです』
『お疲れ様です、花村さん』

お昼から帰ってきた花村さんに遮られた。

『私がここに来ると思ってわざとわかば堂書店の配置にしてもらったの?』
『ちょっと、どうしたんですか。ここに高松を配置するのを決めたのは、神戸さんもよくご存知の桐生ですよ』

花村さんが事実を伝えた。
すると由依は私に小声で、

『あなたの言葉には騙されない。自分の地位と優越感に浸るためなら、"会いたかった"と偽善者になることなんて容易いでしょ?大手出版社の社員さん』
「由依?」
『花村さん、私、今日はお昼だけのヘルプなんです。このあと来週の横浜店でのイベントの打ち合わせがあって移動しなければならないので、これで失礼いたします。完売することを願ってますから』
『ありがとうございます。お疲れ様です』

花村さんには、由依の小声の言葉は聞こえなかったんだね。

それからと言うもの、私のテンションがすっかり下がってしまい、道行く人への売り込む声も小さくなっていた。
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