愛されオーラに包まれて
将来の夢が特に決まっていなかった高松は、父親からの勧めを素直に応じ、しかもそれを神戸さんに報告しなかった。

「なぜ、神戸さんに言わなかったんだ?」
『嫌われるのが怖くて、言えませんでした』

その高松の行動は、かえって神戸さんの怒りを招く結果となった。

『クラスでは、休み時間に1人で本を読んでいる、大人しい子なんです。そのせいか、友達もいなくて。でも、私の前では活発な明るい性格だったんですけど、とにかく短気な子で、些細なことですぐ怒るんです』

短気か。
今の神戸さんからは考えにくいけどな。

『由依の、豊富な知識と知的探求心の旺盛なところが、私の憧れでした。顔だってあの通り、女優さんみたいにキレイですし。あの時、由依にちゃんと進路変更したことを伝えていれば、もう少しマシな関係でいられたかも知れません』

1学期が終わる直前に、就職希望者向けの面接練習会があった。
もちろん、進路変更をした高松は不参加。

神戸さん1人で出席することになったことで、高松が進路変更をしたことを知った。

テニス部は既に引退しており、クラスも違うことから、あまり接点がなかったことも、神戸さんに情報が伝わることをさらに遅れさせた。
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