愛されオーラに包まれて
会議室で、机を挟んで向かい合わせに座った俺達。

「話すことは他でもない、神戸さんのことだ。彼女の心の闇の謎を解くべく、既におとといから動いている」
『はい』

俺の言うことは予想通りなようで、神妙な顔のまま高松は返事をする。

「その謎は、やはり君たちの高校時代まで遡る必要がありそうだ。神戸さんと仲違いした状況を話してもらえるか?」
『はい。高校三年生になったばかりの頃の話ですけど…』

それまで、クラスは同じではなくても、同じ硬式テニス部の仲間として仲が良かったと言う高松と神戸さん。

高松はそれまでの生活環境もあり、早く実家を出て自立したかった。

一方の神戸さんは、母親とふたり暮らし。
しかしその母親はほとんど家には帰らず、神戸さんは部活が終わるとバイトに明け暮れていた。

その時のバイト先が、わかば堂書店の支店だった縁で、わかば堂書店に就職することになったらしい。

高校三年生の最初の頃、学校でたった二人の就職希望者としてお互いにそれまでも励まし合ってきた。

ところが、高松が父親からの勧めもあり、大学進学に進路変更をしたことで、友情の歯車が狂い始める。
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