愛されオーラに包まれて
「話を聞く限りは、神戸さんが高松を羨ましがっているだけのようにしか思えません」

俺はソファーの前で立ち上がった。

「高松に嫉妬を感じ、そして自分が持っている劣等感による苛立ちを、彼女にぶつけているだけのように感じます。違いますか?」
『・・・そうなのかも知れませんね』
「だとしたら、いくらあなたが高松に告げた言葉について謝罪したとしても、それは心底謝ったものではない。あなたの嫉妬や劣等感の原因を突き止め、あなたをその苦しみから解放しない限りは、高松の傷ついた心は癒えない」

神戸さんは体を俺に向けた。

『先程から聞いていると、随分と遥香にご執心ですね。部下以上の感情をお持ちとか?』

なるほど。

神戸さんが接客や各出版社の営業への対応が抜群なのは、その人の心を読むのではなく、心を掴むためのテクニックを身につけていただけだったのか。
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