愛されオーラに包まれて
高松は、神戸さんの左隣に座った。

桐生は高松の前の席に座り、花村は神戸さんの真後ろ。

玲奈は高松の後ろの、さらに後ろの席。

「金澤、やけに遠いな」
『私はここにいます。遥香ちゃんを遠目で見守りますから』

とか言いながら、"あの頃"の定位置であることは、本人も俺も当然気付いていた。

「ここで、何をやるかと言うと、さしずめLHRの番外編ってところかな」
『ロングホームルーム?ここは確かに教室ですけど』
「まぁ、今は付き合ってくれよ、花村」

俺は教壇に立って、黒板に文字を書いた。

"コンプレックス"

『コンプレックス』

桐生がそのまま読む。

「じゃ、桐生、このコンプレックスって、日本語にするとどういう意味だと思う?」
『・・・劣等感、とか?』
「うん。日本では桐生の言ったようにコンプレックスと劣等感が同義語のように扱われる場合があるが、それは精神分析の世界では実は誤りで、劣等感をコンプレックスと表す場合は、"劣等コンプレックス"と呼ぶのが正しい」

俺はチョークの粉がついた手をはたいた。
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