愛されオーラに包まれて
『ごめんなさい。どうか引かないでください』
すると、由依が笑った。

『自分で言った発言を、周りの反応を見て慌てちゃう。こんなのばっかりだよ。ね?剛さん』
『そこは否定できないかな。後悔ばっかりで、いつも由依ちゃんから指摘されてるんです』

由依"ちゃん"と呼ぶんだね。

「何か、由依が強そうだね」
『そんなことないよ。剛さんが一番だよ』
『それにしても、よく粘りましたね、1年半以上も』

すると、剛さんは"アハハ"と笑った。

『結局のところ、諦めの悪い男なんですよ』
「だって、御曹司であろうお方が、いい女なんてたくさんいるだろうに」
『そこに愛はありますか?』

剛さんは急に真顔になって私を見た。

『恋愛進行形の高松さんや桐生さんなら分かると思うんです。僕に近付いてくる女は大抵、僕を見ていないのです。見てるのは家柄とお金と地位。そこに恋愛が存在するわけがありません。男としては適当に遊んで終了。そんな女性、愛せません』

剛さんはそう言って首を横に振った。

『由依ちゃんのことは、わかば堂書店で初めて会ったのですが、完全に僕のひと目惚れでして、どうにかして、彼女の心を溶かしたいと思ったのです』

そう言って剛さんは出会った頃からの1年半以上の間の経緯を話してくれた。
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