愛されオーラに包まれて
次に、ムックか書籍かを議論するための資料。

「これ、作ったの、誰?」
『製作局に相談した上で、僕が作りましたけど』
「これ、そのまま会議資料に使うつもり?」

数字の羅列のみで、内容が薄すぎる。

『はい、この後部長には相談するつもりですが』
「これだと、部長から突き返される。俺なら、突き返す」
『何でですか?』

蒲田は隣の石井が外出中で不在のため、その席に座る。

「まず、何でお前は書籍で出したいと思っているの?」
『それは、その・・・長い期間、売れるかな、と』
「どうして長く売れると思う?」
『・・・』

蒲田は黙ってしまった。
企画書にはそのあたりが何も書かれていないのだ。

「なぁ蒲田、ムックと書籍にはそれぞれメリットとデメリットがあるのをまずきちんと知らないと」
『それは分かっているつもりです。ムックは広告を入れられる分、製作費を抑えられます。書籍は、ハードカバーにしたりして製作費はかかりますが、本そのものを丈夫に作れるので、長く売れます』
「間違ってはいないけど、それだけじゃ足りない」

俺は企画書を閉じて、蒲田の方に椅子を向けた。
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