愛されオーラに包まれて
『大丈夫大丈夫。俺の部屋に押し込むだけだから、ご迷惑はおかけしません』
『突拍子もなく帰ってきて、しかも荷物に自分の部屋の留守番をさせるわけか。泰河のように早いとこ結婚して落ち着けばいいのにな』
『おあいにくさま。今のところ、まーったく予定がございません』

泰河のお父さんにそう言われてもどこ吹く風の天馬さん。

天馬さんは見た目はモテそうなんだけどな。
特定の彼女を作る気がないのかな。

だって年の4分の3がハワイ生活だからね。

『遥香ちゃん、こんな人たちと家族になるんだけど、どう思う?』

泰河のお母さんにそう言われて、ふと思った。
私、泰河と結婚すると、ここの家の嫁。

つまりこの方々と家族になるんだ。

私は一人っ子。
しかも母はいない。

「嬉しいです。賑やかな家族に憧れていましたから」

小さい頃、向かいに住む伯母さんに食べさせてもらっていた夕食。

従兄弟たちとは食事するけど、本当の家族じゃない。

中学生になると、自分でご飯を作るようになって、お父さんの帰りは夜遅いし、ひとりごはんばっかりになった。

寂しい食卓。
寂しい家族。
泰河の家族が、私の憧れ。

その一員になれるって・・・結婚というのは、そういう要素があることを、改めてここで教えてられた。

楽しみな未来を感じる。

この上ない喜び。
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