愛されオーラに包まれて
"アハハハ"

金澤を見ると、さっき俺にお詫びした時以外は、いたってサバサバした明るい表情だった。

同期と楽しそうな会話。

辞めるのをさも覚悟しているかのようにも思えた。
会社に、未練はないのだろうか。

俺達の結婚式の前までに、金澤の本当のところが分かれば、スッキリするんだろうけど。

金澤の送別会は退職日当日の6月30日に行われることになった。

幹事と司会は二部の石井と五部の清水。

金澤は家庭の事情で遅くまで時間を作ることが頻繁にできないため、同期の送別会を設定することができず、営業局主催の送別会に便乗することになった。

『金澤さんの同期プラス局長・・・いや、副社長と高松さんなので、いつもよりかなりの人数になっちゃって。80人近くも入れる場所なんてそうはないですから、仕方ないのでゴールドヘブンリーの小宴会場を抑えましたよ』

幹事の石井が大変さを俺にアピールする。

『副社長に頼んで、安くしてもらいましたから』

ちゃっかりしているのは、営業として働く人間にとっては大事だ。

「お疲れなことだな。仕事は大丈夫か?」

今回の人事異動で、俺が担当していた昨年3月創刊の雑誌【B-Femme】を引き継いだ石井。
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