愛されオーラに包まれて
『でも、訂正伝票作るのが先だよ。遥香ちゃん、ファイト。あ、ごめんね桐生くん、遥香ちゃんに用事?』

と、いつものポーズをしつつも、桐生さんのことを気にかけてくれた。

「すみません、桐生さん」
『いや、いいんだけどさ。ところで、これ…先月の企画会議で通った9月発売予定のチーズケーキのレシピ本で書籍扱いで出すと決まったやつなんだけど、採算分岐が高すぎるから制作費落として広告も入れたいって編集が言ってきてさ。だからムック扱いに切り替えることにしたから、よろしく』
「え?私、編集部に連絡する必要ありますか?」
『ないよ。俺が全部やっておいたから。あとは正式な書類が来るのでうちの局長が決裁するだけ。手元の発売予定表、直しておいてね』

それだけ言うと、桐生さんは立ち上がって去って行った。

『ひとつ、仕事取られちゃったね、遥香ちゃん』

桐生さんの話を聞いていた玲奈さんが言う。

「そもそも、この企画は何で採算分岐が高いんでしょうか…つまりは取材やら編集作業やらでお金がかかりすぎてるってことですよね。そうなると、いくら私たちが頑張って本を売っても、なかなか黒字にならないってことですよね」
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