愛されオーラに包まれて
"分かった。今一瞬だけ桐生くんに代われる?"

「はい」

私は小声で"玲奈さん"と伝えて携帯を泰河に渡した。

『…うん。……うん分かった。ごめんな、金澤。遥香と代わるか?…うん。じゃあな』

泰河は携帯を閉じて、私に返した。

『俺、帰るよ』
「当たり前でしょ」
『金澤からは、お前に送ってもらえ。日下部長や遠藤部長にはこっちで何とかしておくから、っていうコメントを頂きました。但し、午後お前は一旦会社に戻って定時退社をした後俺の看病をしなさい、と命令されました、どうする?』

泰河は一気に私に話した後、もう倒れそうなくらい息が上がっている。

「もちろん、そうするよ。でも私、泰河を担げない」
『タクシー拾おう。そこまでは歩くから』

私は大通りでタクシーを拾って泰河のマンションに行き、泰河をベッドに寝かせた。

息の荒い泰河。
体温計は39.0℃。

冷凍庫にあった冷える枕と、額に貼る冷たいもの、枕元にペットボトルの水を置いた。

「泰河、今暑い?寒い?」
『寒い…』

なら、路線変更。

クローゼットから毛布を2枚出し、泰河自信も何枚もTシャツとトレーナーを着せる。

暑いと思うまではこれで我慢。
暑くなったら冷やさなくちゃ。

『遥香』
「ん?」

いつもより、かなり力のない泰河の声。
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