冷凍保存愛
【序章】 -196°の密室

 マイナス196°で凍らせると未来に生きられる。

 最後に耳にした言葉は信じがたいものだった。

 そんな未来に生きられるわけがないと叫びたいが、

 既に口は塞がれていて声は口の中でくぐもり、

 鼻から漏れ出る空気に混じって唸り声という狂おしい音に変わった。





 人体保存用と思われるカプセルがいくつも並んでいるこの部屋は異様な臭いが立ち込めている。

 機械が動く音が規則的に繰り返され、広い壁に反射してやけに大きく聞こえる。

 両手を拘束されたペイシェントが入れられようとしているカプセルの左右には同じようなカプセルが並んでいて、その中には裸の女が胸の上に大きな黒い箱を抱えるように横たわっている。



 顔は安らかに見えるが、指先は奇妙に曲がっていて、もがき苦しんだような後も見える。








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