冷凍保存愛
部屋は狭い。
六畳ほどの広さの四角い部屋の右側の壁一面は本棚となっていて、天井から床まで本がきっしりと並べられている。
左の壁には不自然なほど何もない。絵画1枚、いや、何かのポスター1枚も飾っていない。
正面には机がひとつ、こちら向きで置かれていて、その上には先程作業をしていたんだろう、書類が乗せられていた。
しかし、その書面にはドイツ語と思われる文字が並び、コーヅには何ひとつ読み取ることができなかった。
部屋の真ん中には丸いカーペット。
日の丸のようにも見え、この部屋には不釣り合いとしか言いようがない。
くるりと見渡し、本棚の中の本を端からざっと流す。
『折れる骨』
『臓器のしくみ』
『人体の秘密』
『人体解剖』
『脳の支配』
『解体保存』
『冷凍する体、脳、魂』
「これだ。これを探してた。やはりこいつだ」
コーヅは開け放たれたドアの方を睨み、ここにいない小田原を思い、眉を寄せた。