冷凍保存愛
『クライオニクス』
コーヅが突き止めた答えが、クライオニクス。
人体冷凍保存。
マイナス196度の低温に置かれると、生物の基本的なシステムはその後数百年は変化しないといわれている。
蘇生させるためには物理的法則からみて、その検体の状態を最初のまま維持することができたなら、
いつか来る未来で再び生き返らせることができる。
本棚にはこのクライオニクスに関する書籍や文献が山ほどある。
机の上にある書類の類いもこれで間違いないだろう。
「くっそ、あの男」
机の上を叩き、置いてある紙を床に撒き散らした。
強羅が危ない。
コーヅは階段を走り、応接間まで走った。
「強羅!」
名前を呼びながら応接間に入ると、そこには誰もいない。
小田原も奥さんも、強羅も、誰一人いなかった。
ものの5分くらいのあいだに3人がいなくなった。
外に出た形跡もない。
強羅が座っていたソファーを触ったらまだ温かい。
しかし、ソファーの横に目をやり、コーヅは全身を針で刺されたような感覚に陥った。
そこには何かをひきずったような跡が、生々しい血によって残されていた。