冷凍保存愛

 4/7(月) 入学式


 眩しい太陽に手をかざし、見上げれば雲一つない青い空。

 肺いっぱいに新鮮な空気を吸い込み、思い切り吐き出せば自然と顔は笑顔になる。

 ザリっと音を立てて一歩踏み出したその足元には、学校指定の真新しいローファー。

 女子は紺のブレザーに同色のチェックのスカート、男子も同じく紺のブレザーにチェックのパンツ、成績優秀、品行方正、磨穿鉄硯の証。

 この制服を着たいと思わせる憧れの一流名門校の制服だ。

 おかしな話だが、この制服を着たいが為に受験戦争を戦い抜いてきた者も少なくない。

 しかし、そこは一流校だ。進学先も保障されているので入学する動機がなんであれ、入ることができるだけでも素晴らしいことだ。

 スカートの裾を手で下へ引き、ネクタイを締め直す。
 高校生活に夢と希望とそれ以上の欲望を小さな胸に詰め込み、軽く一歩踏み出せば、もう後には戻れない。

 草木の瑞々しさに負けず劣らず、はちきれんばかりの若々しさを振り撒き、高校へと向かうその集団の中に、真鶴羽都音(まなづるはこね)の姿はなかった。


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