冷凍保存愛

 自慢の黒髪はぼさぼさ、顔は真っ白く生気は今のところ感じられない。

 ベッドに横たわりうっすらと目を開けているが焦点は定まっていない。

 部屋の中、机の上には新しい鞄、開け放たれたクローゼットには、皆の憧れの的の着ていくべき高校の制服がかけられている。

 カーテンは閉められ、光はその隙間を縫って床に届く程度でこの部屋の中にはすがすがしさは感じられない。

 小さく咳をした羽都音は苦しそうに眉を寄せた。

「学校行かなきゃ」

 咳込みながら起き上ろうとしたが熱によって意識は虐げられ、うまく立つことすら出来ない。

「あら、ちょっと何やってるの、羽都音あんたその熱で学校行くなんて言うんじゃないでしょね? インフルエンザなのよ、ほかの人にうつしたらどうするのよ。お医者様にも一週間は自宅療養って言われてるんだから悪あがきしないで薬飲んで寝てなさい」

「でも、今日行かないと絶対ダメ。だってみんな仲良しグループできちゃうもん。私だけ一人になっちゃう」

「それはちょっと考え物だけど、でもダメよ。いいわね大人しくしてなさい。お母さんお昼には仕事から戻るから」

 羽都音が何か言いかけたが母親はすでに部屋を後にして出て行くところだった。


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