死が二人を分かつとも

右の翼の付け根から、じわりと滲むような出血をしている。

コウモリを手のひらに乗せ、安否を確かめる。

ううん、と唸るコウモリ。意識はあるが、この傷では飛ぶことも出来ない。

「お、お嬢さん。手前はもう飛べません。なので、あいつらに向かって投げて囮に……」

「出来るわけないよっ」

「あ、いえ、それは勘弁して下さいと言いたかったんですが、そうっすか。なら、手前も安心です」

くたぁと手のひらで力を抜くコウモリだった。血は止まらず滲み続けている。止血の文字が浮かんだのは早かった。ポケットの中にあったハンカチを取り出す。

その間にーー

「ひっ」

“べちゃり”と頬にナニか掠めた。

鳥肌が立つ。知らずと息を止めていた。
確かめることさえも怖気立つ。そんなものが頬についていることが嫌で、綺麗にしたいなら拭けば。

「っっ!」

ハンカチを使う一歩前、これはコウモリの止血に使うためだと、袖口で無造作に頬を拭く。

思った以上にどす黒い腐った肉片。呼吸を再開するなりに、悪臭が鼻に通る。

それを意識しないよう、コウモリの止血に専念した。包帯代わりのハンカチが汚れてはいけない。包帯の巻き方なんて知らないけど、巻いて結ぶだけでも様にはなった。


「お嬢さん、手前のためにっ」

コウモリって泣けるんだ、と大事なさそうなその様子に安心感を覚えてしまった。


落とさないよう胸元まで持って行く。
ああ、安心したと思えばまだ不安なんだと、癖を自覚する。

地からの野次に、宙を舞う肉片。

怖い怖いと頭で連呼しても、何も変わらない。

「……かわら、ない」

頭で言ったところで、何も変わらないんだ。

だったら、どうすればいいのか。

分かっている、分かりきっている。
何度も何度も“思い出そうとしていた”じゃないか。

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