死が二人を分かつとも

血だ。
両手が、血に汚染されている。

なら、これは、私の……?

「ちがう、私のじゃ」

傷一つない体。なのに、出血している。

そんな常識があるわけがない。
辻褄が合う事実があるじゃないか。

「そよ香!」

霞む彼の声。まるで、考えるなと言いたげな警告。

酷くなる頭痛も、きっと同じ意味。
これ以上、見ない方がいい。分かり切っているのに、目は開ききり、思考する頭はより鮮明にーー鮮烈に、全てを見せようとしている。

私の血じゃない。
なら、他の人の血。

風に乗って、数多の悲鳴が聞こえてくる。


夢だ、これは夢だ。
繰り返す。私が、“そんなこと出来る訳がない”と、安心したいために。

気休めの安心しかならずとも、今は目を逸らしたい。

夢だ考えなければ、別の言葉が頭を占める。

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