死が二人を分かつとも

たしなめる彼に、ちょっとだけと、足元の免許証を手に取る。

男性が名乗った通りに『八木圭司』の名前。写真も紛れもなく彼の顔だし、首回りだけだけどスーツを着ているのも分かる。


「弥代くん、嘘ついてないと思うよ。困っているみたいだし……」

「だとしても、せいぜい逃げ延びろとしか言えないな」

無慈悲な宣告に、男性ーー八木さんは絶望しているようだった。

「さ、三人いれば、何かあった時に。ほ、ほら大人の僕がいれば心強くはないか?」

「俺より身長もない筋肉もついていない奴がいたところで、邪魔なだけだ」

「き、君ねぇ……!人生の先輩にそれはないんじゃ……ああ、いや。じゃ、じゃあさ、ここがどこか教えてくれないか。子供と約束があって、会わなくてはならないんだ」

父親の顔をする八木さんに、本当のことを答えるべきか迷った。

家族がいる人。子供もいるなら、きっと奥さんもいる。

八木さんの質問に素直に答えるとしたら、『あなたは死にました。ここは地獄です』になるけど、口を紡いでしまうのは必須だ。

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