死が二人を分かつとも

「ちょっと、なによ。なに、“笑ってんの”よ……!」

そんな自覚はない。けど、口元に指を添えれば、口角が伸びていた。

「っっ、ほんと最低!いっそ、死んでよ!」

苛立った真奈は、とうとう手を出してきた。

クラスの誰かが、やめろと制止するも、一方ではやれやれと煽る声も。

平手で殴られ、蹴られる。
罵詈雑言を飛ばされながら、そうして。

「笑うなって、言ってんでしょ!」

“よく分からないことを口にしながら”、真奈の暴力は止まらない。

唇が切れた。血の味がする。
体中が痛いと金切り声をあげるのに、ひどく虚ろな気分だった。

無心にも近い心境。でも、どこからかふと声が聞こえた。

『そっちがやったなら、こちらも遠慮なくやれる』

とても、落ち着く声で、無理するなとそれは言う。

『何をしても、許されるから』

例え、血に染まっても、また彼は抱き締めてくれると分かってしまう。

何をしても、彼は許してくれる。
なら、躊躇わず、彼の言うとおりにーー

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