死が二人を分かつとも

命が生き吹く場所。改めて見回せば、猛々しく育つ葦の原が広がっていた。

風で波打つようざわめく葦。
所々にある木には、葉がついていた。

地獄には似つかわしくない。かといって、暗雲立ち込める空は天国とも違う。それこそ、現実に似た場所。私たちがいた場所に似ている。

「ここが、“最果て”?」

「もー、ちゃんと聞いて下さいよっ。“最果て”に近い場所です!ここは結構安全なんですよ!大概の“死人”さんは、ここに辿り着く前に“残骸”になりますし、“残骸”なればここにはたどり着けませんし、“死人”や“残骸”いなければ、それを補食する“住人”もいない。ここまで来れば、こっちのもん!やりましたね、そよ香さん!生まれ変わりを望むなら、少し先に進むだけでいいんですから!」

生まれ変わるか、ここに留まるか。
そう話していた彼を思い出し、はっとする。

「や、弥代くんは!?」

葦が邪魔して遠くまで視界は届かないけど、呼んでも呼び返してくれないともなれば、はぐれてしまったらしい。

自分がしたことを思い出す。なんてことをと、口元を押さえた。

「んー。やっさんには、“最果て”の目印ーーとりあえず、緑目指せばいいって言ってますから、その内追いつけばいいんすけど。そよ香さん、かなーり走り回ってましたから。いきなり倒れられた時は、びっくりしましたけど。やっさん無敵ですから、そんな心配しなくてもいいと思いますよー」

「無敵って……。心配なものは、やっぱり心配だよ」

何度も馬鹿なことをした私でも、彼は探してくれているのか。

考えれば、自然と、私を探して走り回る彼を想像してしまう。

『何をしても、許される』

どんなことがあっても、愛してくれている彼。

「何で、私……こうなんだろう」

やること全てが空回り。良かれと思ってやったのに、最悪の結果を招いてしまう。


本当の目的が決まらず右往左往し、迷うなら私だけでいいのに、周り(弥代くん)を振り回して、あげく、彼を拒絶してしまった。

彼はただ、私がいいようにしてくれているだけなのに。

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