スケッチブック










次の日。










学校を休むわけにもいかず、登校。











オトンが気がかりで、








勉強なんて頭に入って来んかったけど。











学校が終わって、まっすぐ病院。













こうしていると、思い出す小学1年生の記憶。










確か、あのときもこうやった。








学校が終わればすぐオトンが迎えにきて、




オカンのおる病院で過ごす。











結局オカンは………ガンで亡くなってもうたんやけど。













そんなことを考えているうちに、






涙が出てきた。














オトンに心配かけんように涙を拭って、










オトンの病室に入る。











「オトン。ウチやで!美穂!」




笑顔を作って病室に入ると、点滴しながら絵を描くオトンの姿。






「なんや、美穂か。」


「『なんや』って何やねん!」


「すまんすまん。冗談やて。よう来てくれたな。」









オトンはうちと話しながらも、絵を描く手を止めない。






オトンの描く絵に、何度も迷惑したけど。





オトンが画家やなかったら、もっと裕福な暮らしが出来たやろ、て思うこともあるけど。









それでも、やっぱり好きやねん。







オトンの描く絵。










何やろ…優しいねんな。


色とか雰囲気が。






今日は病室の窓から見える空の絵。




きれいじゃないけど、きれい。



オトンにしか描けへん絵。







「すごいなぁ。なんかオトンの絵は他とはちゃうなぁ。」



なんて言ってみる。




「分かってるわぁ。さすが俺の娘やな!」






「………病気。わかったんやろ。」





本題に入る。





「………病気ちゃうて。ただの疲労や。」





オトンはそう言ってんけど。嘘や。





オトンは昔から、嘘つくと唇を噛む癖あんねん。

今、まさにそうやんなぁ。








「オトン。嘘なんかつかんと……」



そう言いかけたとき。











ガシャ








オトンが倒れた。
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