スケッチブック
「なんでこんなところに藤岡先生おんの?」
「美穂ちゃんが来てる、って横峯ちゃんから聞いたんや。」
昔より皺の増えた藤岡先生。
中身は昔と変わらんけど。
「……今回相川信也さんの主治医を務めます藤岡と申します。」
「どこが悪いん?」
食い気味に言ったんやけど、先生は怒りもせんと静かに言った。
「美穂ちゃんのオトンな……簡単に言えば頭のガンやねん。」
やっぱり。
そらオトンも隠すやろ。
「正確に言うと腫瘍。脳腫瘍、聞いたことあるか?」
よくドラマに出てくるあれ。
ドラマは美化されてるもんやから、あんなん嘘やと思ってたけど。
本当のことやった。
「じゃあ……副作用、とかありますか?」
ドラマやと、副作用が辛いって聞いた。
でも、先生は首を横に振った。
そして、悲しそうに言った。
「オトンな、手遅れなんや。」
確かにそう言われた。
「腫瘍がめっちゃでかくて手術も薬物療法も意味ないんや。」
「こんなこと、言いたないけど………
余命、3ヶ月くらいなんや。」
信じられない。
信じたくない。
なんでオトンなんやろ。
「ごめんなぁ………」
藤岡先生が、泣いた。
それを見て、気づいたらうちも涙が出てきて。
2人で泣いた。
そんなとき、藤岡先生が呼び出しをくらう。
オトンが目を覚ました、
そう言われた。
正直今あってどう接することが正解かはわからんけど、
でも言いたいことがあったから、
うちは病室へ向かった。