愛を欲しがる優しい獣
34話:留守番
「ごめんなさいね。亜由は今、買い物に出掛けているの」
いつものようにインターホンを押して、出迎えを待っていると現れたのは香織さんだった。
「そう……ですか……」
「そろそろ帰って来ると思うから、待っていてくれる?」
そう言われてリビングに通されると、俺たちの他に誰もいなかった。
「他の皆は?」
「早苗と櫂は部活。あとは樹がまとめて市民プールに連れて行ったわ」
「そうですか」
(DVD持ってきたのにな……)
見たいと言われて録画しておいたホラー映画をテーブルの上に置く。
窓の外を見れば雲一つない良い天気で、佐藤さんが干したと思われるシーツが風に吹かれてはためいていた。
どこかで蝉が鳴いている。
世間の学生はすっかり夏休みモードで、佐藤家も例外ではない。