愛を欲しがる優しい獣

「あの子、会社で上手くやっているのかしら」

「佐藤さんは真面目ですから。きっと仕事にも手を抜いていないと思いますよ」

会社内で佐藤さんの悪い噂など聞いたことがない。仕事ぶりは至って真面目で、一生懸命すぎるのが偶にキズぐらいだろうか。

「そう、それなら良かったわ」

(そういえば……)

香織さんの職業って何だろう。両親はともに海外生活が長くて、めったに家に帰ってこないことは知ってたが、その職業までは聞いていない。

良い機会だと思って尋ねてみる。

「失礼ですが、香織さんのご職業って……」

「学者よ、民俗学の。亜由ったら何も説明しなかったのね。夫婦で活動しているの。一応本も出しているのよ、私達」

「学者ですか……」

俺はすっかり感心していた。

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