愛を欲しがる優しい獣

「嫌だった?」

俯いて空になったグラスを握りしめていた彼女はゆっくりと首を振った。

「服が……」

「服?」

佐藤さんは困ったように呟いた。

「せっかく出掛けるならもっとちゃんとした服装で行きたかったのにな……」

(服装なんて気にすることなんてないのに)

ささいなことを気にする姿は可愛いらしい。俺の前で着飾ってくれるつもりだったことも嬉しい。

「大丈夫、俺もこんな感じだし」

自分の服装を指差してみれば、佐藤さんのよりひどい格好をしている。俺も少し気にした方が良いかもしれない。

「まずは、どこに行くか決めないとね」

俺達は本屋に向かうべく、涼しいコーヒーショップを後にしたのだった。

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