愛を欲しがる優しい獣

ようやく小魚達に別れを告げて、佐藤さんと一緒に館内を見て回る。

クラゲのライトアップや夏休みの自由研究用の展示スペースは大人でも十分楽しめた。

これは初めて知ったことだが、どうやら佐藤さんは魚がひらひらと背びれや尻尾を揺らして泳いでいるところを見るのが好きなようだ。

水槽を悪戯につつくと魚たちが驚いて俊敏に動くのを満足そうに眺めている。

「水族館、好きなの?」

「昔ね、一度だけ両親と来たことがあるの。その時からもう夢中なの」

佐藤さんがいつになく興奮しているようで。

これから例の水槽を見たらどうなってしまうのだろうかと、余計な心配までしてしまうのだった。

< 141 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop