愛を欲しがる優しい獣
目的の水槽はその謳い文句に違わず、とてつもない迫力だった。
「大きいね……」
佐藤さんの目はキラキラと輝きを増していた。
一枚板で作成された水槽は目に見える範囲全てが水で満たされていて、まるで小さな海のように様々な種類の生き物たちがひしめきあっている。
水槽の中が目立つように照明を落としてあり、ぼうっと淡く光る水の中に吸い込まれてしまいそうだった。
クリアブルーに時々、丸い泡が浮かぶ。
佐藤さんはそのひとつひとつを見逃すまいと、目を凝らしていた。
「すごい……」
子供のように夢中になっている大人がよっぽど珍しかったのか、水槽の中で掃除をしている飼育員がこちら向かって手を振ってくる。
ふたり揃って手を振り返すと、水中で反転して床下の清掃に戻って行った。