愛を欲しがる優しい獣

*****************************************

「意外と普通なのね」

佐藤さんはホッと胸を撫で下ろしたように言った。

派手な看板の割に、内装は普通のホテルと同じようで、白と茶色のシンプルな部屋だった。

男女でこういった類の所に入る抵抗と、一刻も早く家に帰らなければという責任を天秤にかけた結果、佐藤さんの天秤は後者に傾いた。

苦渋の決断だったのは、想像に難くない。

ここがどういう所であるかはさすがに知っているのだろう。

先ほどからそわそわと落ち着かないようで、あちこちの扉を開けたり閉めたりしていた。

それはこちらも同じだった。

「シャワーでも浴びてきたら?」

佐藤さんはシャワーという単語にビクリと反応した。

< 151 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop