愛を欲しがる優しい獣
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「意外と普通なのね」
佐藤さんはホッと胸を撫で下ろしたように言った。
派手な看板の割に、内装は普通のホテルと同じようで、白と茶色のシンプルな部屋だった。
男女でこういった類の所に入る抵抗と、一刻も早く家に帰らなければという責任を天秤にかけた結果、佐藤さんの天秤は後者に傾いた。
苦渋の決断だったのは、想像に難くない。
ここがどういう所であるかはさすがに知っているのだろう。
先ほどからそわそわと落ち着かないようで、あちこちの扉を開けたり閉めたりしていた。
それはこちらも同じだった。
「シャワーでも浴びてきたら?」
佐藤さんはシャワーという単語にビクリと反応した。