愛を欲しがる優しい獣
「樹とプールに行ったじゃない」
「近所のプールじゃん」
陽は小学生になってから口が達者になったようだ。喜ぶべきか、悲しむべきか。
「静弥も行くだろう?」
「行く」
静弥くんにまで味方にされたら、こちらになす術はない。あとは鈴木くんの判断に委ねる。
「どう……?」
様子を窺うようにチラリと鈴木くんの顔を見ると、空調がきいているというのにダラダラと汗が噴き出していた。
「ごめん、明日は課長と出張に行く予定が入っていまして……」
床に手をついて完全に謝罪モードに入った鈴木くんに、子供達が一斉にブーイングを放つ。
「えー!マジかよ」
「信じらんねー」
私は希望が叶わなくてすっかり落胆している恵の頭をそっと撫でた。
「今回は仕方ないわね」
「恵ちゃん、ごめんなさい!」
恵はフルフルと頭を横に振った。