愛を欲しがる優しい獣

「中華まん買ってきたんだ。夕飯の後で食べようよ。佐藤さんはどれにする?」

レジ袋の中には電子レンジで温めるタイプの中華まんがいくつも入っていた。ちゃんと全員分ある。

「……これ」

どれにしようか迷った挙句、オーソドックスな肉まんを指差す。

「了解」

鈴木くんは油性マジックで中華まんを包装しているビニールに私の名前を書いた。

個人の食べ物は名前を書くという我が家の性質を知り尽くした行動である。

“目的のためなら手段を選ばない貪欲さ”

“不要なものも切り捨てる冷酷さ”

(そう言われてもね……)

冷蔵庫に中華まんを仕舞う彼の背中を無意識に追う。

「何?」

手元を見られていたことに気が付いた鈴木くんが何事かと尋ねる。

(何かの間違いよね)

私は何でもないと答えると、準備する皿を一人分増やしたのだった。
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