愛を欲しがる優しい獣

「ねえ、鈴木くん。私に隠していることはない?」

ずいっと鈴木くんの方に身を乗り出す。

あの日小林さんに聞けなかったことを鈴木くんに尋ねるのなら今しかない。

「なに?藪から棒に」

私が身を乗り出した分だけ、鈴木くんが身体を引いていく。

急に真顔で迫られて戸惑っているのだろう。

「辛いことがあるなら聞くわ。だから正直に話して?」

「だから、何の話?」

どうやらとぼけているというわけではなさそうだ。

私は話の核心をついた。

「どうして……勘当されたの?」

鈴木くんはお父様の当選が決定した時より、苦々しい表情になった。

「誰から聞いたの?」

「この前、小林さんと一緒にお茶したの。鈴木くんに家に戻るように説得して欲しいって頼まれて……。断ったけど」

「あの人、そんなことしたの?……やっぱり落選しておけば良かったのに」

恨めしげに頭を掻く鈴木くんの台詞はあえて聞かないふりをする。

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