愛を欲しがる優しい獣
第7章

54話:甘い誘惑


「渡辺先輩、佐藤先輩、ご一緒してもよろしいですか?」

私と椿はお互いに顔を見合わせた。

「どうぞ!」

誘うように隣の椅子を引けば、関谷さんは社食のトレイを流れるような仕草でテーブルに置いた。

ほうっと感嘆のため息が漏れる。

関谷さんはいささか地味な総務部に突如として舞い降りた天使だった。

三カ月におよぶ本社での合同研修後に彼女が総務部に配属されると、その美貌は直ぐに評判になった。

長く伸びた手足に艶やかな栗色の髪が縁取るご尊顔には、バラ色の唇と扇形に広がった長い睫毛が絶妙なバランスで配置されていた。

ため息をつきたくなるほど、素敵な顔立ちだ。

全体的に色素が薄い理由を聞いてみれば、お母様が東欧出身だという。

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