愛を欲しがる優しい獣

総務部全会一致で彼女についたあだ名は“姫”だった。名前が“白雪”という乙女チックなものであることも影響しているのだろう。

配属当初はその派手な容姿に気後れしたものの、控えめで謙虚な性格の彼女は仕事にも熱心に取り組むので、指導を担当している私と椿にとっては良き後輩と言えるだろう。

「今日は同期の子達と一緒じゃないの?」

関谷さんが食べているのは椿も大好きなパスタランチだ。今日は和風きのこパスタの日だ。

普段は同期の仲間と一緒に外まで昼食を取りに行っている関谷さんが、社食に来ること自体珍しいことだった。

「もたもたしていたら置いていかれちゃったみたいで。だから、今日は社食なんです」

外で昼食を取るには待ち時間も計算しなければならない。同期の仲間全員が同じ時刻に集まるのは至難の技だ。

「たまには良いんじゃない?社食も美味しいでしょう?」

椿がおそろいのパスタランチをフォークで示す。先輩風を吹かせている様子にクスリと笑みが漏れる。

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