愛を欲しがる優しい獣
……鈴木くんがいなくなって弟妹達が平気でいられるはずがなかった。
みんな私に気を遣っていたのだ。
(私は……逃げていたのね……)
鈴木くんの気持ちからも、自分の気持ちからも。
……そして、家族の気持ちからも。
私は意を決っしてハンガーに掛けてある己のコートを手に取った。
「私……ちょっと出掛けてくるね」
(みんな、ありがと)
心の中で愛すべき家族に礼を言う。最後に背中を押してくれたのは……やっぱり家族だった。
「樹、あとはよろしく」
「いってらっしゃい」
私は樹にあとを任せると、鈴木くんのマンションへと向かった。