愛を欲しがる優しい獣
「その時は慰めてやるよ」
そう言って、盛り付けに使っていた菜箸を取り上げる。
「でも、もう手遅れかもしれないわ」
鈴木くんはもう関谷さんと付き合っているかもしれない。仲睦まじいふたりの間に割って入ることなど出来ない。
「だったら追いかければ良いでしょう?」
早苗が私の背中を強引に押しながら答える。のけぞるように前を歩けば、ピンクのエプロンが外されていく。
「頑張ってお姉ちゃん!!」
台所から出ると、生乾きの髪を振り乱してひろむが飛びついてきた。
「そうだよ。あいつがいないとつまんないもん」
陽に同意するように恵が頷いている。