愛を欲しがる優しい獣
21話:仲間入り
「ここで待っていてくれる?」
鈴木はそう言って、店のバックヤードへと消えていった。
連れてこられたバーは歓楽街の外れ、雑居ビルの地下一階にあった。
待っていろと指示された俺は仕方なくカウンターに腰掛けた。
学生が出入りするようなチェーン店の居酒屋とは違う雰囲気に気後れしそうだった。
酒を楽しむためだけの贅沢な空間。
置いているグラスも、バーテンダーの動きも、灯されているランプの揺れ具合さえも演出されているような錯覚に陥る。
鈴木がこういった高級感の漂う店を知っていることが意外だった。
「貴士の知り合い?」
唯一の従業員らしきバーテンダーは興味津々といった感じでカウンター越しに俺の顔を見ていた。