愛を欲しがる優しい獣

「あんた……もしかして……鈴木か?」

その問いに男は声のトーンを一つ落として答えた。

「…人違いです」

「嘘だろ。声が同じだ」

最初は当てずっぽうで言ったのに、まさかの大当たりだったようだ。

よくよく注意して見てみてば、声以外にも鈴木と特徴が一致している箇所がある。

それをひとつひとつ指摘する前に、男は観念したようだ。

「ここにいたことは佐藤さんには内緒にしておいてくれる?」

(……やっぱり鈴木じゃねーか)

どうしてこんなところにいるのか、その姿は一体どういうことなのか。

聞きたいことは山ほどあったが、質問攻めをする前に目的地に到着してしまった。

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