愛を欲しがる優しい獣

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(どれが良いかしら……)

プレゼントしようと決めたからには商店街の瀬戸物屋ではなく、贈答用の品が並んでいるデパートにやってきたは良いものの、目移りしてしまって逆に困る。

形、色、名の知れた産地のブランドものまで種類は豊富に揃っていた。

手に取ってその使い心地を確かめてみるが、これといった違いは感じられない。

腕組みをして考えてみるが、どれもいまいち購入に至る決め手に欠けていた。

一番困るのは、鈴木くんならどれを贈っても感謝してくれそうだという点だ。

(ダメ……決められないわ……)

今日は諦めようと売り場から出る直前に、視界の端に見慣れたキャラクターを発見して立ち止まる。

ちょうど目に入ったのは、セカイジャーがプリントされた子供用の茶碗だった。

(さすがに……これは……)

そう思いつつもいざという時の為にこっそり値段をチェックしておく自分がいるのだった。

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