愛を欲しがる優しい獣
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「はい、これチケット。鈴木くんの分も」
「ありがと、佐藤」
チケットの受け渡しに10階に行くと、佐伯くんはちょうど外回りから帰ってきたところだった。鈴木くんが周りにいないことを軽く目で確認してから尋ねる。
「ねえ、佐伯くんって鈴木くんとよく出張に行くの?」
「そうだな……。いつもってわけじゃないけど」
枚数と日付を確認し終えた佐伯くんがスーツの胸ポケットにチケットをしまう。
そして、まじまじと私の顔を眺めたのだった。
「なんだよ。佐藤も鈴木狙いかよ。やめとけやめとけ。ちょっと見てくれが良いからって、老いも若きも鈴木、鈴木って」
佐伯くんがあまりにも拗ねたような言い方をするので、思わず吹き出してしまう。