愛を欲しがる優しい獣

「椿に急ぎの用件?」

「明日、乗る予定だった飛行機が台風で欠航になってさ。商談はずらせないから新幹線に振り替えしたいんだけど……」

ようやく合点がいった。今朝のニュースで、台風接近に伴って大気の状態が不安定になっているので、大雨や雷の影響に注意しろとアナウンサーが何度も警戒を促していた。

こちらの地方は幸いなことに、台風の進路からは外れるようだが、佐伯くんは運悪くとばっちりをくらったのだろう。

「それなら、私がやろうか?」

飛行機が運休になっているならば、新幹線の予約は大分埋まってきているはずだ。

どうしても外せない出張なら、座席の確保は急いだ方が良い。

「悪い、佐藤。助かるわ。じゃあ、俺と鈴木の2名分よろしく」

渡された出張申請書には佐伯渉と、鈴木貴士の名前が書いてあった。

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