ストーンメルテッド ~失われた力~
翔は、黒い無地のカバーを付けた本を読んでいた。病室の開いた窓から、そよ風が入る......。

すると、病室の扉が開く音がした。振り向くと昨日の女の人だった。

「今度はなんですか?」

本を閉じて言った。

「うーん、遊びに来た」

ジュノは、そう答えると翔のベッドの端に座った。

「え......」

「あら、いけなかった?」

「いや、そういう訳じゃ......」

少しの間、言葉を詰まらせてから彼は口を開いた。

「ジュノさんはあの時、僕に何をした
の?」

「ストーンをここに預けたの。ただそれだけ」

彼女は自分の胸元に手をあてて、そう言った。

すると翔は自分の胸元に目をやり、確認するかのように手をあてた。

「どうして?」

「でないと私は神の力を失って神の世界か
ら追放されるからよ。......信じ難いでしょ
うけど」

「......神? ..................それは、嘘だ」

「別に信じなくても構わない。私はただ、ストーンが無事に元に戻ればそれでいいわ。............何、読んでたの?」

「ホラー小説だよ」

「ホラー? ......悪趣味ね」

「いいだろ? 好きなんだから」

すると翔はふと、ジュノの目元にくまがはっきりと出ている事に気が付いた。

「ジュノ、寝てないの?」

「寝てないんじゃなくて、寝れないだけよ」

今にも、闇の精霊の封印が解けてしまうのでは無いかと言う不安、ナキアの言っていた発言の意味......
それに、ヘリオスとの関係が一変して欲求不満になっていた。だから、ジュノはここ最近、いい眠りにつけていない。
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