檸檬-レモン-



「だって、やり直したいとか、戻ってくるとか…そんな期待も何もないよ」


ぼそりと言葉を落とす。


別れてからしばらくはそんなものに期待をしていた。

戻ってくるって。

やっぱりあたしがいいって。


そう言ってくるのを、期待していた。



でも今は、何とも思わないんだ。


ただ、幸せでいてくれればそれでいいって。



その隣にいるのが、例え私じゃなくても。



もう、過去は振り返らない。




過ぎてしまった幸せな日々にすがりついて泣いていても、ただ虚しいだけだから。



余計、苦しくなってしまうから。


思い出を思い出として、抱きしめられるような自分になりたい。



そう、自分の中で答えを出せたんだ。



ハルは少し苦しそうに笑って、これ以上特に何も言わなかった。



.
< 4 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop