。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。
「ちょっと待てや。いくら何でも直接結び付けるのは早いで?」
俺が慌てて響輔に説明すると
「可能性はゼロパーセントじゃないです。畑中組にその噂が浮上している以上、見過ごすことはできませんよ」
「じゃぁスネークの野郎は畑中組を通してヤクを手に入れてると?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
彩芽さんやタチバナが追っている組ですよ。我々は彼らに導かれて畑中組の裏カジノを探ろうとしている。
何故か?それは彼らが潜入できない場所だからに他なりません」
響輔の説明は淡々としていた。
けれど的を射た仮説に俺は反論すらできなかった。
「恐らくスネークの新薬の原料は畑中組から仕入れている。そのヤクに何を投入したのかは不明ですが、恐ろしい薬ですよ」
響輔は視線を険しくさせて俺の前でぴたりと止まると、真剣な表情で俺を見下ろしてきた。
俺は親指の爪を噛んだ。
「新薬のカラクリを解くのが先か、
それとも原料の根絶やしを先にするか―――」
「選択は二つに一つです。お嬢がこの状態な以上、畑中組の潜入は見送りにした方がよさそうですね。
畑中組を潰しても、ヤクなんて手に入れられるとことなんていくらでもある。
昨今は町ですら売人がうろついているぐらいですからね。
クスリが完全に抜ければいいのですが」
もっともな意見だな。
「クスリの抜き方なら俺に任せておけ。三日間で抜いて見せる」
俺が胸を叩くと
「随分な自信ですけど、手慣れてそうですね。まさか戒さん―――」
響輔が疑いの目を向けてきて、俺は肩をすくめた。
「俺はやってねぇよ。アメリカに居るとき連れがやってたけどな。そんで抜き方ってのも心得ている」
「そうですか。安心しました」
響輔は全然安心してないような口調で言って、俺はまたまた肩をすくめる羽目になった。
「とりあえず詳しく検査をしてみる必要はあるな」
「しかし御園に行くわけにはいきませんよ。あそこはスネークの息が掛かっている」
「そんなん考え済みだ。
大阪から
―――対馬兄妹を呼び寄せる」
俺の言葉に響輔がゆっくりと目を開いた。
「つしまきょうだいを――――」
意外な意見だったのだろう、ゆっくりとした口調でもう一度復唱して、確かめるように俺を見てくる。
「ああ、あの暴れ馬たちだ」
「東京で何かしでかさなきゃいいですけどね」
響輔は額を押さえ、
「お前は対馬兄妹と協力して、新薬のカラクリを解明しろ」
俺が響輔を指さすと
「了解しました……」と渋々……頷いた。