。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。




あたしの言葉に二人はあたしを注目した。


な、何で見るんだよ、こっちをよぉ!



「響輔……」


戒はキョウスケを目配せ。


キョウスケも小さく頷き


「確かに黒と白、チェスには全く同じ駒が存在します。



“鏡”と例えるのが的確でしょうね」



黒と白――――…


チェス……


って言い出したのはあたしだからそれは分かるとして…


「な、なぁ“鏡”って何のことだよ」


あたしは戒の袖を引っ張った。


「「…………」」


あたしの問いかけに戒とキョウスケはまたも顔を見合わせて、二人して同じタイミングで口を噤んだ。


何だよ!また二人してっ!あたしに隠し事かよ。


一人置いてきぼりにされた気がしてあたしはムスっと口を尖らせていると


「武器なんかの所持はなさそうですけれど、車内を調べるのなら今の内ですよ」


とキョウスケが話題を変えるように言い出した。


あたしも“鏡”に関して大して興味がなかったのか


「調べる?」と自分でも素直にキョウスケを見上げた。


「そうだな。二手に分かれようぜ。俺はドクターに行くから朔羅と響輔、お前らはタイガの方な」


「了解」


二人はあたしの返事を聞かずして二手に分かれ始める。


「ま、待って!」


あたしはいつもなら大人しくキョウスケについていくのに、今日ばかりは


戒と一緒に居たかった。


戒がゆっくりと振り向く。


ドクターの車に危険なんてないだろうけれど、それでも目を離したら―――


こいつが危険な目に遭いそうで



怖かった。




何より



昨日の喧嘩で開いた距離を



戒は開いてない―――って思うだろうけど



あたしは――――、一言で言い表せない微妙な距離を少しでも近づけたかった。




打ちっぱなしのコンクリートの壁に映ったあたしの影が揺れる。


あたしは戒の方へと走って行った。







「ごめんキョウスケ。


あたし……




あたしも―――


戒と一緒に行く」










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