。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。


「あの、助けてくれてありがとうございました」


あたしが頭を下げると


「いいの、いいの~!兄貴と姐さんの大切な人だから~」とこれまた軽い調子でへらへら笑う先輩。


何だろう……髪黒いし、爽やかなかっこはしてるけど


激しく不釣合い。


「ところでさー、一人で何やってんの?もしかして誰かと待ち合わせ?」


と聞かれて


「あ、千里と。11時に待ち合わせだったのに、さっき電話が掛かってきて『今起きた』とか。あり得なくないですか?」思わず愚痴ると


「そりゃひでぇな」と進藤先輩も苦笑い。


考えてみればあたし随分、先輩と普通に喋れるようになった。前は本当に怖かったし、話すことはおろか、近づきたくもなかったのに。


結構、ふつー。ふつーに楽しい人だ。


最近では何故か響輔さんと先輩と言う三人の組み合わせで遊びに行くことも多いし。


でも二人っきりってのははじめてだ。


「待っててくれって言われたけど、あたし一人でファミレスとか無理だし」と正直に話すと


「じゃ、俺も一緒に入るよ。一緒に千里を待とうぜ~」


んで、待たされた分あいつに全部払わせようぜ、と言う黒い言葉は聞かなかったことにして~


でも、何か良かった。


一人でうろうろしてたらまた同中の男子たちに絡まれそうだったし、進藤先輩は他校でもちょっと有名(?)な感じだし、一人で暇をもてあそぶより全然いい。


と、思ったのは一瞬で


「はー、涼しい。生き返るわー」


ドカッ!


先輩はファミレスのテーブル席の椅子に足を付き、すぐさまポケットからタバコを取り出して一口。ガラの悪さ丸出し。


どっちもどっち?あたし、人選ミスッたのでは??


「それにしても先輩、随分雰囲気変わりましたね。イメチェン?」と、何とか気を取り直して聞くと


「あー、これね」と先輩は前髪をちょっとつまんで


「兄貴の嫁さんのガキをこっちで出産するらしいから、しばらくうちに泊まるっていって。


その間だけでもまともにしろって親父がさー」


「へぇ……」進藤先輩ってお兄さん居たんだ。


「でも、普通出産って奥さんの実家近くじゃないですか?」


それともワケあり?


まぁ進藤先輩のお兄さんだから、絶対チャラくてナンパした女の子と流れで同棲してデキちゃったとか


色々想像を巡らせてると





「あれ?知らなかった?


俺の親父、進藤病院の医院長。


だから兄貴の嫁さんもそこで出産する予定なんだ」




へ―――……!?


進藤病院て言えば、ここいらではかなり有名な総合病院で……そこの


医院長!!?




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