。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。


――――

――




「は!?自殺未遂!?


あの女狐が!!?」



俺はあれから数分後、何とか落ち着いた響輔からとつとつと語られる言葉に耳を貸した。


今は処置室の前の長椅子に二人並んで腰掛けている。


それまでのいきさつをかいつまんで聞かせてもらったが


響輔は本気でイチと付き合おうとした。


本気であの女狐と向き合おうとしていた―――


あの女狐が自殺未遂とかそっちも信じられんけど、響輔が本気で女狐を選んだのがもっと信じられなかった。




「何で……?お前……朔羅のこと……もう諦めたんか…?」




と、聞いた言葉は思いのほか弱々しかった。


本来の俺なら「ラッキー!これでライバルが一人減った!」ぐらいに思うが、そのライバルが


“響輔”


だから、素直に喜べない。


俺は響輔の気持ちを痛い程―――知っていたから。


響輔は俯いたまま額に手を置き、



「何でなんやろ……


自分でもよぅ分からへんのです。



でも



一結は愛情に飢えた女や。


誰にも愛されず、ずっと―――





孤独やったんや」



響輔の語られた内容に、


『それは同情じゃないのか?』


とは聞けなかった。


イチの自殺未遂でここまで動揺して、泣いている響輔には、


言えなかった―――


「ほんで、何でお前のせいなん?


イチはお前に惚れてるんやろ―――?



お前がフって自殺未遂なら分かるんやけど」



< 345 / 439 >

この作品をシェア

pagetop