。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅴ・*・。。*・。


イチの自殺未遂と言う一件が一段落したのか、奇跡的にこのフロアには俺とタイガしか居なかったのが幸いした。(いや、心も居ったけどな)


あれだけの騒ぎを起こして誰も……響輔も、気付かなったぐらいだ。病室の壁は相当厚いんだろう。


タイガは姿を消した。


あの状態で、きれいに消え失せるとは―――流石だな。


だがこれではっきりした。


“カズノリ”はヤツにとって……いや、俺たちにとって“ジョーカー”だってことを。


「男に襲われた??戒さんに?」


と響輔が心の腕を巻きつかせたまま疑いのまなこ。


おい!俺をそんな目で見るんじゃねぇ!!


いくら迂闊に朔羅に触れられない状態でも、そこまで困ってねぇよ!


と言う視線を送ると


「何や、背ぇが高い男やったわ。なかなかのイケメンやったよ。一瞬やったけど」


と、心が得意げになって響輔に説明。


「でも一番のイケメンは響輔やで~」と響輔の顎を掴むと響輔の頬に強引にキス。


響輔はそれを鬱陶しそうにして適当にあしらい、まぁ、昔から心は響輔のこと可愛がってたからな、こいつは響輔を男としてじゃなくペットとして可愛がってるフシがあるけど、あしらい方も年期が入ってる。


適当に「はいはい」てな具合で頷き


「ところで何の騒ぎですか?」と俺に聞いてきた。響輔にとって心に聞くより俺の方が手っ取り早いと踏んだに違いない。


「ちょっと“口論”になってな、タイガとやりおうてた。


したら、心が落ちてきてん」


「落ちてきたって何!うちはあんたに加勢してやったんよ!


うちが居らんかったら、あんた今頃殺されとったんとちゃう!」


「あの……」


「加勢せぇ頼んでないわ!てか、お前!兄妹揃ってどないな登場なん!


速人にも会うたけど、びっくりし過ぎて声でぇへんかったわ!!」


「あの…」


「あんたが愛しの“朔羅ちゃん”の検査して欲しい、言うたんやろ。


だから、うちらがわざわざ来てあげたのに」


「来いとは言うた!せやけどあんな心臓に悪い登場の仕方せぇ言うてない!」


「せやかて、普通に“朔羅ちゃん”に会っても、怪しい思われるやろ?」


「あの!」


合間に入っていた響輔が声を荒げ





「お嬢から電話です。


もう充分怪しまれてるんちゃいます?」





あちゃー!


俺は額に手を置いた。


“あの”速人のことだから、何かしでかすんじゃないかと思ったが…


「変わる」


俺は泣きそうになりながら響輔からケータイを受け取った。


俺はタイガがスネークかも、と言う事実より何より



朔羅が怖い。



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